いろは出版代表・詩人 きむ× 「図案」

「呼吸をするように描ける」
発想のすべてを集約するモノ

INTERVIEW
木村 行伸 (きむ)

1980年福井県生まれ。学生時代より路上で、詩と写真を組み合わせたポストカードを販売。ポストカードは全国の中高生に絶大な人気を誇り、累計1000万枚以上を売り上げる。2001年に仲間たちと「いろは出版」の前身となる合資会社を京都に設立。現在も詩人として活動する傍ら、いろは出版代表として、出版・雑貨・ウェディング・似顔絵など様々なジャンルにおいて「愛ある、ものづくり」をモットーに仲間たちと挑戦し続けている。

京都の出版社・いろは出版の代表の木村行伸(きむ)さんは、一風変わった経歴を持つ人物です。詩人・きむとして発表しているポストカード作品は、ロフトや東急ハンズといった雑貨店で、累計販売数1000万枚以上を記録。また当初は自身の作品集を出版するためにスタートしたという、いろは出版の代表としても、本だけでなく、雑貨、似顔絵、ウェディング用品など、「出版」という領域を超え、さまざまな「ものづくり」に取り組んでいます。

そして、そんなきむさんの柔軟な発想を影で支えているのが図案スケッチブックです。彼が「大地のような安心感」と語るそのスケッチブックには、いったい何が描かれているのでしょうか? そして、そのアイデアを、どのようにしてビジネスに結実させているのでしょうか? きむさんのスケッチブックを覗き込むと、そこには長年愛用しているこだわりの筆ペンによって、独特の文字がしたためられていました。

きむさんは、いろは出版代表として会社を経営しながら、詩人・きむとしても活動しています。いったい、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?

きむすべての始まりは大学生の頃、京都・寺町の路上で詩の販売をはじめたことでした。高校3年生から詩を書き始め、大学1回生で写真を覚えます。そして、当時最先端だったiMacを使って、詩と写真を組み合わせた作品を作ったところ、大学の友だちみんなから「ええやん!」と絶賛してもらえた。そこで、この作品を路上で販売し始めたんです。今から18年前のことですね。

反響はいかがでしたか?

きむ始めはドキドキしながら路上に出ていたのですが、いつの間にか人だかりができて、たくさんの人が作品を手にとって購入してくれるようになりました。通りすがりの人が足を止めて、涙を流しながら「元気出た」と言ってくれたのはとてもうれしかったですね。そして、この作品をもっとたくさんの人に届けたい!と思ってつくったのが、いろは出版の前身である「きむカンパニー」だったんです。

普通のアーティストや詩人であれば、既存の出版社などに持ち込んで本やポストカードを流通してもらおうと考えます。なぜきむさんは、自分の会社をつくり、販売を手がけるようになったのでしょうか?

きむしばらく路上販売を行っていたところ、人気が出て、京都のイノブンや、大阪・梅田のロフト、神戸の東急ハンズなどでも販売をしてもらえるようになりました。そこで、全国発売をしてくれるメーカーを探したんですが、売り込みをしても反応は散々だった……(苦笑)。

だから、大手が作品のよさをわかってくれないならば、自分でやるしかないと考えたんです。また、後輩にもポストカードや似顔絵の作品を制作している人間が多かったのですが、彼らのようなアーティストが作品づくりを仕事にできる場をつくりたかったのも会社を設立した理由のひとつ。好きなものをつくって食える人間を増やしていきたかったんです。だって、めっちゃ楽しんでいるやつが稼いでいる姿って、とてもかっこいいじゃないですか。

会社の設立は、自分のためでもあり、後輩のためでもあったんですね。

きむもちろん、当時20歳くらいで何の経験もなかったので不安はありました。けれども、目の前でお客さんが喜んでくれた経験が、自分に自信を与えてくれましたね。今では、ポストカードは累計1000万枚、本も100万部ほど買ってもらっているし、社員も80人以上に増えています。

きむさん自身、どのようにして図案スケッチブックと出会ったのでしょうか?

きむいつも、その日の気分でスケッチブックを選んでいたのですが、ふと気づくと、僕が使用していたスケッチブックのほとんどがマルマンのものでした。たまには浮気をしようと思って購入したスケッチブックがマルマンの「アートスパイラル」だったときにはビックリしましたね(笑)。

無意識で選んでしまっていたんですね。

きむマルマンのスケッチブックには、社員の愛情が込められているから自然と手に取ってしまうんでしょうね。機能的には、呼吸をするように描けることがいちばんの魅力です。僕の詩は即興で、自分自身も次にどんな言葉が書かれるのかはまったくわかりません。自分としては手が勝手に書いているような感覚なんです。そんな手の動きを邪魔することなくどっしりと支えてくれるのが図案スケッチブック。この紙には、まるで大地に描いているような安心感があります。

詩人としては、その描き心地が魅力的だった、と。

きむ詩人としてだけではありません。僕は、詩の言葉も、経営の思考も、両方一緒くたに図案スケッチブックに綴っているんです。詩を書いた次のページには、会社のチーム編成が書かれていることもあるし、年度方針や、採用面談の所感が書かれていることもあります。僕の発想のすべてが、図案スケッチブックに集約されているんです。

どれくらいの頻度でスケッチブックを使っているのでしょうか?

きむ時期によりますが、おそらく月に1冊~3冊くらいですね。土日も年末年始も休みなく、毎日のように何かを書いています。特に、夜眠る前や、寝起きの瞬間に何かを思いつくことが多いため、枕元には図案スケッチブックが欠かせない。忘れてしまったら、わざわざベッドから起きて取りに行くほどなんです。スケッチブックがなければ落ち着いて眠れないほどです。

きむさんの傍らには常に図案スケッチブックがあるんですね。

きむ四六時中書いている姿を見て影響されたのか、僕の子どもたちも図案スケッチブックを愛用しています。先日、自分のスケッチブックを開いたら、娘から「いつもあそんでくれてありがとうだいだいだいだいだいすきです」というメッセージが書かれていました。見てくださいよ、超ラブリーでしょ!

親子のコミュニケーションツールにもなっている(笑)。では、ファンとして、今後図案スケッチブックにはどのようになってほしいと思いますか?

きむこの先もずっと変わらないでいてほしいですね。ずっと愛情を込めてつくられてきたから、図案スケッチブックは世代を超えて60年にわたって愛されてきました。自分自身、ものづくりをしていて実感するのですが、お客さんは、商品に愛情が込められているかどうかを察知する能力を本能的に備えています。愛情は数値にしづらいものですが、経営的な視点から見ても商品に愛情を込めることは、理にかなったことなんです。

いろは出版も、愛情が込められたものをたくさんつくっていますね。2003年の創業から15年を数えましたが、今後、どのような会社にしていきたいと考えていますか?

きむ僕のモットーは日本を元気に、世界を笑顔にすること。以前は、詩をつくることが、そんな笑顔を生み出す方法だと考えていましたが、それは会社という形でもできることではないかと思うようになりました。

僕の詩は、僕が死んだ後にはつくられることがありませんが、もしもいろは出版という会社が続いていけば、僕が死んだ後も100年、200年にわたって笑顔を生み出し続けていくことができる。いわば、不老不死のような状態ですね(笑)。ずっと、世界を笑顔にし続けていられるような「いろは出版」にしていくことが夢です。







取材・文:萩原雄太
撮影:加藤 甫
編集:横田大(Camp)

取材・文:萩原雄太
撮影:加藤 甫
編集:横田大(Camp)

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