サイバーエージェント デザイナー武原江美奈× 「図案」

「質感まで描く」
デジタルにこそ必要な手描きの魅力

INTERVIEW
「アメーバピグライフ」デザイナー 武原江美奈

京都生まれ神奈川育ち。多摩美術大学卒業後、フリーのイラストレーターとして活動。「憧れるより体験あるのみ」と1年間渡仏。デザインの仕事をしつつも、ヨーロッパの美術や音楽がとても身近にあるライフスタイルにどっぷりハマる。帰国後2011年に株式会社サイバーエージェントに入社。現在アメーバピグライフにてイラストのディレクションや物語などの世界観管理、ロゴ制作などを担当する。自分の作り出したものでみんながワクワクして欲しいという願いをもとに日々猛進中。

サイバーエージェントが手がけるサービス「アメーバピグ」内で提供している農園シミュレーションゲームであり、今月7周年を迎えた「ピグライフ」のデザインを担当する武原江美奈さんも、図案スケッチブックを愛用するひとり。

PCとペンタブレットでイラストを描くことが当たり前になりつつある今、なぜ武原さんは手描きで図案スケッチブックにイラストを描いているのでしょうか? その理由を紐解くと、いまだ魅力的なアナログメディアの可能性が見えてきました。

 武原さんはアバターを使ってバーチャル空間でのコミュニケーションを楽しむサービス「アメーバピグ」のコンテンツである「ピグライフ」のデザインを行っています。これはどのようなコンテンツなのでしょうか?

武原 ピグライフは、自分のアバターをつくって農園生活を楽しむゲームです。畑を耕して収穫したり、料理、裁縫、工作をしたりと、ゲームの中でのどかな暮らしを楽しむことができます。

世界観としては、ヨーロッパの片田舎をイメージした庭があり、マルシェという広場で買い物をしたり、港町をお散歩したり。また、自分のお気に入りの庭をつくるだけでなく、他のユーザーとのコミュニケーションを楽しむこともできるサービスです。

 そんな「ピグライフ」のデザイナーとして、武原さんはアイテムやキャラクター、背景など、世界観を統括しているんですね。

武原 実際にイラストを描くのはイラストレーターですが、全体の構想を話し合うときに、どういうものをつくろうかとイメージを描きます。それを元に、イラストレーターといっしょに世界観をつくり上げていくんです。

 武原さんが図案スケッチブックに描いたイメージが、イラストレーターに伝わっていくんですね。ところで、PCでラフを描いて伝えたほうが共有しやすいのではないかと思うのですが、なぜスケッチブックにラフを起こしているのでしょうか?

武原 最終的に絵を起こす際にはIllustratorで制作をするのですが、自分の中でイメージがしっかり構築できていないと、いきなりPC上で描き起こすことは難しいんです。手描きの場合には、描く過程で膨らませることができるので、そのほうがイメージを早くカタチにできるということも理由のひとつなんですが、何より私自身が「紙に絵を描くこと」が好きなんです。

 スケッチブックに描くのと、PCで描くのではイラストの質感も大きく異なりそうですね。

武原 私の場合、全然別物という感覚ですね。手描きの場合、まずクロッキーにラフのラフを描き、クライアントやイラストレーターなど外部に見せるタイミングで図案スケッチブックに清書をしています。紙の品質がいいので、スケッチブックに描くときには、身が引き締まる思いがしますね。

 なぜ、そのような使い方をするようになったのでしょうか?

武原 私が(ピグライフの)デザイナーになったばかりのころ、当時ピグライフのアートディレクターを務めていた方が、スケッチブックに描かれたラフを見せながら、その世界観を説明してくれたんです。それがとてもわかりやすく、イメージもすぐに伝わってきた。そんな体験に影響され、人に見せるときには図案スケッチブックを使い始めたんです。

それと、少し個人的な話をすると、美大を卒業してフリーでイラストレーターとして活動していたのですが、仕事ではPCを使うことがほとんどで、紙に絵を描く機会が少なくなっていました。その後、1年間フランスに留学していたんですが、知人から「絵が描けるんでしょう?」と声をかけてもらい、招待状や名刺を手描きでデザインさせてもらっていました。

帰国後にサイバーエージェントに入社したのですが、当時日本ではまだスマホが普及していなかったため、今よりはイラストレーターの活躍の場が限られていました。そんな中、ピグという可愛いイラストをふんだんに使ったピグライフの仕事はとても魅力的でした。
だから、描きたいものがたくさんあるなかで、つくりたいものをこだわってつくれる今の環境は、とても理想的なんです。

 武原さんのスケッチブックに描かれているような丁寧で熱のこもったラフを見せてもらったら、見せられたクライアントもやる気が出ますね(笑)。

武原 以前、とある企業にコラボ企画を提案したことがありました。先方は最初、あまり前向きに考えていらっしゃらなかったそうですが、こちらで描いたラフをお見せしたらイメージが湧いたようで、コラボを実現することができたんです。

 武原さんの手描きラフがクライアントの心を動かしたんですね。

武原 手で描いていると、だんだん気持ちが乗ってきます。そして、とても細かく描き込むようになっていく。気軽に手を動かせるし、手から伝わってくる刺激でイメージも膨らみやすいんでしょうね。

 サイバーエージェントという最先端のIT企業の中で、スケッチブックが使われていることに驚かされますが、武原さんのお話をうかがっていると、まだまだ紙を使う必然性が残されているんですね。

武原 私のようなデザイナーだけでなく、プロデューサー、ディレクターといった職種の方も、要点をまとめるために会議で使ったり、パワーポイントにつくり込む前のプレゼン資料を構想するためにスケッチブックを使っています。だから図案は常備されているんですよ。

 代表の藤田さんも図案を使っていたとお聞きしました。武原さんにとって、図案スケッチブックの魅力はどこにあるのでしょうか?

武原 まずは紙の強さを実感できるのが魅力的ですね。シャーペンで下描きをした後に、ペンを入れ、消しゴムをかけるのですが、薄い紙の場合には紙が消しゴムに絡まってしまうことがあります。図案スケッチブックならば、そのような問題は絶対にない。

それと図案は、インクの染み込み方がとても気持ちいいんです! 紙がすぐにインクを吸ってくれるために、ペンを入れたあとすぐに消しゴムをかけられるのも便利なポイントですね。

 図案の紙質が、武原さんのアナログな感覚にぴったりとハマっているんですね。

武原 実はチームとしても、アイテムを制作する上で「アナログであること」は、とても意識していることなんです。ピグライフには、たくさんの種類の花や植物が登場します。図鑑などを参考にすることも多いのですが、実際にその花がどのくらいのサイズなのか、質感はザラザラしているのか、肉厚なのかといった感触が写真からはわかりにくい。だから植物園に足を運び、間近で観察をした上で描くようにしているんです。

 足を運んで観察することによって、どんな違いがあるのでしょうか?

武原 イラストの「質感」が全然違ってきますね。

 「質感」とは?

武原 たとえば、バラの美しさを表現するには、花びらの魅力だけでなく、全体から立ち上る優雅な雰囲気や棘がある固い茎の感じ、といった手触りや質感を理解しながら描くことが大切です。

実際にその対象に触れることではじめて、その植物の持つ質感を感じながらイラストを描くことができる。イメージや写真だけ、PCだけで描いた絵とは歴然とした差が出ますし、ユーザーからの反応が変わることも、これまでの経験でわかってきました。

デジタルだからこそ、その感覚を捉え、魅力的に見えるようにするには、手描きであることが重要だと思うんです。

 武原さんにとって、「ピグライフ」のデザイナーという仕事のおもしろさはどのような部分にありますか?

武原 ブログのコメント欄などでユーザーさんから「このアイテム可愛い」といった感想をダイレクトに貰えるのは、ピグライフをつくるおもしろさのひとつです。アイテムを使ってお庭の模様替えなどの画像をweb上にアップしてくださるユーザーもたくさんいらっしゃって、そういう楽しんでくださっている様子を拝見できるのが、本当に嬉しいです!

 ディスプレイを経由しても、ユーザーとのコミュニケーションは人と人とのアナログな気持ちのやり取りなんですね。

武原 そうですね。ピグライフではイベントごとにアンケートも実施していまして、その回答からも自分のデザインが喜ばれ、ユーザーさんが楽しんでくれている様子が伝わってきます。それによって、自分の中にやりがいが生まれ、またかわいいイラストを描こうという気持ちになれる。

これからもユーザーに喜びを提供し、新しい体験だと感じてもらえるようなクリエイティブをつくっていきたいですね。

取材・文:萩原雄太
撮影:加藤 甫
編集:横田大(Camp)

ミュージシャン奇妙礼太郎×「図案」

表現がどう生まれるかはわからない ただ無性に何かを描きたくなる瞬間がある

よく晴れた春の昼下がり、雑居ビルの屋上でスケッチブックの歌を奏でるのは、シンガーソングライターの奇妙礼太郎さん。今回、彼はマルマンからの「スケッチブックの歌をつくってほしい」という依頼を快諾し、ほぼ即興でその歌詞を図案スケッチブックに生み出し、カメラの前で出来たての曲を披露してくれました。

いろは出版代表・詩人 きむ× 「図案」

「呼吸をするように描ける」 発想のすべてを集約するモノ

京都の出版社・いろは出版の代表の木村行伸(きむ)さんは、一風変わった経歴を持つ人物です。詩人・きむとして発表しているポストカード作品は、ロフトや東急ハンズといった雑貨店で、累計販売数1000万枚以上を記録。また当初は自身の作品集を出版するためにスタートしたという、いろは出版の代表としても、本だけでなく、雑貨、似顔絵、ウェディング用品など、「出版」という領域を超え、さまざまな「ものづくり」に取り組んでいます。

「AIUEO」デザイナー 糸井侑× 「図案」

「思い出のスケッチを雑貨に」 込められた想いを、幸せを広げる

ゆったりとした時間が流れる京都市郊外の住宅街。すぐ隣を畑や小川が囲み、学校帰りの小学生が友だちと一緒に下校しているような街の一角に、雑貨や本を取り扱う「いろは出版」の本社はありました。 本だけでなく、雑貨やウェディンググッズなどさまざまなものを取り扱っている同社の中でも、特に、動物や人、くだものなどをモチーフにしたかわいらしいデザインの雑貨ブランド「AIUEO」の人気は高く、渋谷ヒカリエShinQsや大阪のNU茶屋町プラスなどにもショップがつくられるほど。そして、そんなブランドで雑貨デザインを担当しているのが、デザイナーの糸井侑(ゆき)さんです。

文具王高畑正幸× 「図案」

文具の国の王様 まっすぐな眼差しで世界をのぞむ

真っ赤な王冠を被って取材の席についたのは、「文具王」の異名を持つ高畑正幸さん。かつて、その道のマニアが日本一をかけて戦うテレビ番組『TVチャンピオン』(テレビ東京系)の「全国文房具通選手権」で3回にわたって優勝を飾った彼は、まさに文具王の名を冠するにふさわしい人物。 日本でもトップの文具マニアとして、文房具を紹介する記事の執筆や、トークショーへの出演、文房具の実演販売、そして、文房具マンガ『文具を買うなら異世界で!』(KADOKAWA)の監修まで、さまざまな側面から文房具の魅力を伝えています。

ロフトワークディレクター石川由佳子× 「図案」

「企て屋」の 私が見つけた、自分と対話する場所

「企(くわだ)て屋です」 組織や地域の課題をクリエイティブの力で解決する、クリエイティブ・エージェンシー「ロフトワーク」のディレクター石川由佳子さんは、自分の仕事をこう説明します。

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