東京ヤクルトスワローズ つば九郎 ×「図案」

つば九郎のスケッチブックは「自由」の象徴

INTERVIEW

60年の歴史を持つ図案スケッチブックは、美術やデザインの現場のみならず、さまざまな人々に愛用されています。今回の一連のクリエイターインタビューでも、ビジネスパーソン、経営者、ミュージシャンなど、意外な人々が、独自の使い方で図案スケッチブックに親しんでいる様子を紹介してきました。

この企画を考えるにあたって、編集部ではたびたび、「どんな方にインタビューをすれば図案スケッチブックの魅力が多くの人に伝わるのか」と、頭を悩ませてきました。そんなおり、何気なくテレビをつけていると、目に飛び込んできたのが神宮球場をボテボテと歩く1羽のツバメ……。

なんと、東京ヤクルトスワローズのマスコットキャラクター「つば九郎」の手に図案スケッチブックが握られていたのです!これは取材をするしかない!

東京ヤクルトスワローズ マスコット つば九郎

「じゃぱん」出身。生年月日は不明だが、初出場は1994年4月9日の阪神戦。身長・体重は「チームで5番目ぐらい」の圧倒的なレギュラークラス。血液型は雲竜型。右投げ/右打ち、背番号2896。座右の銘は「よしっ飲みに行こう!!」。スワローズに入団してよかったのは「(職場が)都心の一等地、ヤクルト飲み放題」とのこと。球団マスコットで唯一ユニフォームは着用せず、基本的に裸にヘルメットであることもわかるように、性格は自由奔放(ちなみに正装は“裸ネクタイ”)。「球界の暴れん坊」の異名を持ち、当時ホークスの監督だった王貞治に、記念撮影とサインを求めたことがある。2015年、主催試合連続1500出場を達成。現在はマスコット史上初となる、2000試合連続出場を目指し活動中。

さっそく神宮球場を訪れた取材陣の前に現れたつば九郎。デビュー当時からするとだいぶ丸くなった(ややメタボ?)体型からは、愛らしさよりも若干「おっさん」のオーラが漂ってきます……。

94年に産声を上げて以降「ちーむとふぁんのかけはし」として、球界きっての人気者に成長。球団マスコット史上初となる、主催試合連続出場1500試合を達成し、現在は2000試合連続出場に向けて邁進しているつば九郎は、ある苦い経験から、スケッチブックが肌身離せなくなってしまった、と言います。いったい、つば九郎の身に何が起こったのでしょうか?

「とあるかいじょうで、すけっちぶっくがなくて、げんちのかたが、こぴーようしを、くりっぷでとめてもってきてくれました。1まいめくったら、こぴーようしぜんぶ、くりっぷからはずれ、ばらまきくいずじょうたいに……」

喋ることができないつば九郎にとって、その思いを書きつける真っ白な紙はファンとのコミュニケーションに欠かせないツール。しかし、それがばらばらになってしまい、かつてないほど慌てふためく結果に……。

このとき「すけっちぶっくのいだいさをしりました」という彼は、以来、肌身離さずにスケッチブックを持ち歩くようになったのです。

では、数あるスケッチブックの中から、なぜ「図案スケッチブック」を選びとったのでしょうか? つば九郎にとっていちばんのお気に入りポイントは、「いろいろためしたけっか、1ばんつかいやすかった」というその機能性。

なかでも、つば九郎の太い指でも簡単にページをめくることができるのが、図案の最大の魅力なんだそう。さらには、ページをめくりやすくするため、ページの左端を三角に折るというオリジナルな裏技も考案しました。

「かどを、さんかくにおると1ばんすむーずだときづいたとき、のーべるしょうもんの、はつめいだとおもった……」

ノーベル賞はそんなに簡単ではないと思いますが……。

とにかく、この裏技を発明したことによって、つば九郎のスケッチブックは格段にめくりやすくなり、球場にやってきた観客やテレビカメラの前でもスムーズにコミュニケーションを取ることができるようになったのです。

つば九郎氏が開発した、ノーベル賞ものの発明・三角折り「図案」

 

 

しかし、ここでひとつの疑問が。昨年度のオフシーズンに契約更改を行ったつば九郎は、「ちーむは6いですが つばくろうがんばりました」「ぐっずうりあげだい1い」と、チームへの貢献をアピールし「ねんぽうあっぷおねがいします」と懇願するも、その年俸は2万2000円と現状維持の結果に……。


数百円で購入できる図案スケッチブックといえども、1年に数百冊ものスケッチブックを消費すれば、あっという間に生活費が底を尽きてしまうのでは……? しかし、つば九郎は余裕の表情でこう答えます。

「かいしゃにみとめられた、ひつようけいひとしてしきゅうされてます!」
なんと、つば九郎の図案スケッチブックはスワローズも認める必要経費だったのです!!
よかった……。 

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「ねんぽうあっぷ」が認められなかった悔しさからか、たんにインタビューに飽きてしまったのか。チームの備品を無駄使いし出す、つば九郎氏。

 

 

 

とはいえ、「年俸すえおき」を食らった彼に、なんとか笑顔になってもらいたい!

実は今回マルマンでは、図案スケッチブックを愛用してくれているつば九郎への感謝の気持ちを込めて、特別に「つば九郎モデルのスケッチブック1年分(365冊)」のプレゼントを用意していたのです。

自分自身と球場のイラスト、「すけっちぶっくなのにえをかかない。」という文字がデザインされたオリジナルの表紙を見て、つば九郎は「まぢかんどうです ありがとうございます!」と、喜びを爆発。

さらに「どくぜつもかきますが、かいしゃのしんようをくずさないようたいせつにつかいます」と、さっそくページの左端を熱心に折って、そのめくり心地を楽しんでいました。

最後に、彼にとって「図案スケッチブック」とはどのような存在なのか? を尋ねると、「あいかた。せんゆう。なくてはならないそんざい」との答えが返ってきました。

野球選手にとって、バットやグローブがただの道具以上の存在であるように、つば九郎にとって、サインペンと図案スケッチブックは文房具を超えたパートナー。

球界一の愛されマスコットは、今日も図案スケッチブックを携えて、ファンの前にちょっとメタボになった姿を披露しつつ、「じゆうにふるまうこと」の大切さを示してくれています。

取材・文:萩原雄太
撮影:加藤 甫
編集:横田大(Camp)

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