画家 山口 晃 ×「図案」

「マルマン スケッチブック」と、
伸びの良い海外メーカーの水彩絵の具

INTERVIEW
画家 山口 晃

1969年東京生まれ。群馬県桐生市に育つ。 2001年、岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞受賞。 国内外での展覧会ほか、書籍の装丁や広告の原画などを手掛ける。 著書『ヘンな日本美術史』が第12回小林秀雄賞を受賞。 昨年より桐生市の藝術大使を務める。

撮影:曽我部洋平

「日本の伝統絵画の様式を用いて油絵の技法で描く」という唯一無二の表現を切り拓いてきた山口さん。現代画家として広く知られる彼がアイデアや企画をどのように発展させ、作品へと結びつけているのか。またそこで「図案」はどんな役割を果たしているのか。すべての「創作」に関わる方へのヒント満載のインタビューです。

メモの段階では描き込まずイメージを大掴みに

古めかしい日本家屋に混じって電柱やビルなど現代的なモチーフが共存する、ユーモラスな都市鳥瞰図や合戦図などを描き出す山口晃さん。「メモには、これをずっと使っています」と言いながら見せてくれたのは、「マルマン スケッチブック」のB6版。年に2、3冊の割合で買い足して、捨てずに持っているため、数十冊はあるという。

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「手のひらサイズで持ち運びしやすいので、取材先で立ったまま風景を描いたり、会った人物の顔の特徴をパパッとスケッチしたりできます。スケッチも言葉のメモも、これに何でも書きます」

  

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ラジオの現場を取材したときのメモ。これを基にマンガを作成するため、スケッチとメモ書きが共存

  

ラジオの現場を取材したときのメモ。これを基にマンガを作成するため、スケッチとメモ書きが共存

使っているペンは、「サクラクレパス ピグマ」。長い年月を経ても劣化しづらい、水性の顔料が使われているのが特徴。ペン先は0.05mmから3.0mm、筆タッチのものなど、用途に合わせて揃えており、画家ならではのこだわりがうかがえる。

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ペン先の太さが異なる「サクラクレパス ピグマ」。時を経ても劣化しづらい水性の顔料は、作品作りに欠かせない

  

スケッチブックの中を見ると、「ビル 坂」と言葉を添えた、連なる建物のような絵があった。

「これは頭に浮かべて描いた、坂に建っているビルです。スケール感のギャップが、面白いことになりそうだなと。この段階では、いわば表現の『核』となる要素だけ、ぼやっと描いておきます。線をはっきり決めないほうが後で見返したとき、頭に描いていたイメージを思い出しやすいんです」


そのほか、押し寄せる大波がいくつか描かれているページを発見。見事な描写だったので、写真を見て描いたのか問うと、「頭の中にあるイメージを描きました」という。

「リアリティを考えたとき、実物それ自体とそれが持つ“らしさ” の、どちらにどれだけフォーカスするのかが大事になってきます。例えば、自分や既知の人の顔写真を見たとき、こんな顔だったっけ、ということがありますよね。“真実を写す” はずの写真でさえ、頭の中のイメージと異なる場合がある。一方で、誰もが『似ている!』と認める似顔絵がある。本人の顔と並べて見比べると、実は似ていなかったりするけど、この似顔絵こそ、人がイメージする“らしさ”を表現したものといえます」

大和絵を学んで花開いた“落書き” 混在の独自の画風

山口さんは「幼いときから、よく落書きをしていました」と話す通り、アトリエには子どものころに描いた、消防車や機関車などの絵があった。小学生高学年のころの絵を見ると、メカニカルな描写の宇宙船のイラストがあり、現在の画風に見られるような仔細な描き込みぶりだ。そんな “お絵描き少年” は、やがて美大へと進学し、油絵を専攻する。

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「今はこの線がひけない」と話す、山口さんの子どものころの絵

  

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中学2年のとき描いた、自宅の前の風景。マンホールや電線など、リアリティを表現するための描写が細かい

 
 

「西洋美術由来の油絵を勉強していくうちに、考えたんです。かつての日本の絵師たちは、中国絵画を学んで日本独自の絵画を大成させた。そんな古の絵師のメンタリティが自分の中にある状態で油絵をやれば、うまく為していけるのではないか。しかし自分の中には、日本らしい要素ってほとんどないんだなと気付いたんです」

着物も甲冑も着方が分からない。家に目を向ければ、床の間に西洋文化の産物であるテレビが置いてある、という有様。そんな思いを抱えていたとき、東京で開催されていた大和絵展を訪問した。

「古い絵を見ると、雲が低いところにあるんですよね。地上5mくらいのところに浮いているような。また、線遠近法も使われていない。日本の古典絵画の、違和感を覚える部分を同じようにやってみようと思ったんです。『型』から入れば、そのうちに『心』が備わるだろう、という考えからです。」

こういった過程を経て生まれたのが、現在のスタイルの絵画。雲によって空間が仕切られ、遠景にある建造物が手前と同様、卓越した画力で詳細に描き込まれている。その中に、山口さんの昔から好きな機械的なモチーフも共存。見る人に驚きを与える作品を生み出し続ける山口さん。

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撮影:浜崎務

 
 

「室町時代の絵画をもっと研究したいです。深く掘り下げると、それだけ先に進む反作用が生まれると思うんです。そんな作品を作りたいですね」と意欲を見せた。


※本インタビューは、書籍「トップクリエイター26人のアイデアノート」(ブレーン編集部/宣伝会議)に掲載された記事を、 「ブレーン編集部」「MIZUMA ART GALLERY」のご厚意で、転載させていただいたものです。

「トップクリエイター26人のアイデアノート」(ブレーン編集部/宣伝会議)
https://www.sendenkaigi.com/books/jituyo/2771

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