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【レビュー企画】水彩紙スケッチブック「ヘリテージ」に描いて比較してみた！
レビュー企画第2弾！ ということで、再び登場しました「読む文具編集部」です！
第1弾の『図案スケッチブック 』に続き、今回お届けするのは“水彩紙”のスケッチブックレビューとなります！
水彩画を描いている方にはおなじみの水彩紙スケッチブックですが、その種類は多様で特長もさまざま。人によっては同じ製品を使い続けていたり、描きたい絵によって使い分けていたりするかもしれません。
マルマンで取り扱っている製品には、マルマンオリジナルの国産水彩紙『ヴィフアール』、加えて『アルシュ』『キャンソン・ヘリテージ』『ボッキングフォード』など世界でも有数の水彩紙があり、多く の方に愛用されています。
レビュー第2弾では、そのなかでも『キャンソン・ヘリテージ』をピックアップしました！ 「最高級水彩紙」と呼ばれる理由は？ どんな描き心地？ その特長やラインアップを振り返りながら、今回は『キャンソン・ヘリテージ』の描き心地や紙肌 などをチェックしていきます！
キャンソン社といえば、約500年もの歴史をもつ、知る人ぞ知るフランスの老舗製紙メーカー です。ドラクロワ、ドガ、マティス、ゴッホ、セザンヌなど名だたる巨匠たちもキャンソン社の紙に作品を描いており、現在も多くのアーティストに愛用されています 。
今回レビューする『キャンソン・ヘリテージ』は、そんなキャンソン社の500年近くにおよぶ経験の蓄積と、最先端技術の粋をあつめた水彩紙なんです！ そう聞くだけでも 、『キャンソン・ヘリテージ』が「最高級水彩紙」と呼ばれる理由が少し想像できますよね。もう少し具体的に、その特長を見ていきましょう！
紙をつくる工程（抄造／紙料から紙を漉く作業）には、大きく2種類あることをご存知でしょうか？ ひとつは現在一般的となった「長網抄紙機」を使った製造方法、もうひとつが伝統的な「円網抄紙機」を使った製造方法です。
「長網抄紙機」による製造は、紙を高速かつたくさん抄造できるのがメリット。一方の「円網抄紙機製造」は手すきに近く、厚い紙を漉けたり、紙の流れ目がしっかり絡み合うことで紙が丈夫になったりと、さまざまな利点があります。
原料が吸水性のよいコットン100％である『キャンソン・ヘリテージ』は、伝統ある技術を駆使し、「円網抄紙機」で抄造されているため耐久性の高さが魅力です。また、次世代のサイジングによって濡れていても紙の安定性や白さが保たれ、均一なウォッシュやリフティングのやりやすさ、鮮やかな発色が得られるという特長も。
『キャンソン・ヘリテージ』には、「極細」「細目」「荒目」の3種類の紙肌があり、中間となるのが「細目」 です。
また、ラインアップとしてパッド製本と四方固めブロック製本があるほか、初めて使う方にもおすすめの一枚シート製品（560×760mm）、大きな作品も描けるロール製品（1,560×4,520mm）と、目的やシーンに合わせて選べます。
今回のレビューでは、パッド製本の水彩紙スケッチブック『キャンソン・ヘリテージ』の「極細」「細目」「荒目」をそれぞれ比較しながら、その極上の紙肌を体験していきたいと思います！
極細・細目・荒目の見た目を比較
「純粋な白さ」「極上の紙肌」と評される『キャンソン・ヘリテージ』。まずは3種類の紙肌を比較しながら、実際に水彩絵具で描いていきましょう！
表紙を開いてまず印象的に感じるのが、紙の白さです！ 水彩紙は製品によってほんの少しクリーム色っぽく見えることもありますが、『キャンソン・ヘリテージ』はほどよい白さで、色を鮮やかに発色してくれるのでは……と期待感が高まります。
それぞれ紙肌の違いはどうでしょうか？ 一度並べて近くで見てみましょう。
左から極細・細目・荒目です。
「極細」と「細目」ではそこまで紙肌に差はないのかな？ と思ってしまいそうですが、見比べてみるとやはり違いは一目瞭然でした。
ちなみにこのヘリテージ、表面の凹凸がほかの水彩紙製品と比較してもどこか違いを感じます。中間にあたる「細目」でも凹凸が大きい印象で、その凹凸が均一に広がっているように見えました。まるで一つ一つ凹凸をきれいに並べたような紙肌 になっているので、初めて見る方はもしかしたら少し驚くかもしれません！
それでは、いよいよ『キャンソン・ヘリテージ』に 試し描きしていきます！
極細・細目・荒目の紙にそれぞれ描いてみた
まずはサッと一筆で線を引くように描き比べてみました。やはり「荒目」になるほど凹部分に絵具が溜まって、色に深みが出ていますね。何より、どれも発色が鮮やかです！ もちろん、紙は波打つことなく安定しています。
「極細」で筆のタッチがしっかり表れることは予想していましたが、「細目」「荒目」のほうの描線もきれいに出ていますね！ 水彩紙によっては中目・荒目の紙を使うと線の外側が少しギザギザっぽくなってしまいますが、ヘリテージだと滑らかな印象です。
また、顔料が均一にのびている点や筆の跡が残っていない点にもご注目！ 水彩紙によっては紙の白い部分が残ったり、絵具の輪形がムラっぽく残ったりしますが、とても均一な描線を可能にしてくれています。これなら思い切りよく筆を走らせても、思い通りの絵が描けそうです！
それぞれの紙肌がわかるように、続いてドライブラシでも試してみましょう！
同様にドライブラシで線を引いてみましたが、こちらはさらに紙肌がよくわかるのではないでしょうか。紙肌の違いの参考として、現在お使いの水彩紙とも比較してみてください。「極細・細目・荒目の見た目を比較」のところでも触れたように、ヘリテージの紙表面の凹凸は均一性があって独特な印象ですね。
紙肌がより見えるように鉛筆で塗ってみました。細目でも十分凹凸があり、しかも規則的な凹凸であることがわかります。
耐久性が自慢のヘリテージですが、下書きする際は、紙を傷つけないようやわらかい鉛筆を使うことをおすすめします！
● 細い筆でも描いてみる
細い筆も試してみましたが、やはり凹凸が小さい「極細」が一番描きやすく、線もシャープになりました。「細目」は凹凸がある程度大きいため、やはりほかの製品でいうところの「中目」くらいをイメージしたほうがよいかもしれません。
※『キャリソン・ヘリテージ』の「細目」は、『ヴィフアール』などマルマン水彩紙の「中目」にあたります（「極細」は、マルマン水彩紙の「細目」にあたります） 。
● 画用紙とも比較してみた
凹凸の大きさやにじみ止め加工がされているどうかなど、そもそも水彩紙と画用紙はつくりに違いがあります。 それでは水彩絵具を扱う場合どれだけの違いが出るのか、比較してみたいと思います。
『キャンソン・ヘリテージ』は「細目」を選んでいますが、やはり発色や色の均一具合など一目瞭然。 『キャンソン・ヘリテージ』は紙のほどよい白さ により、その鮮やかさが際立っています。また、絵具の吸水や乾燥もじっくりのため、「にじみ」や「ぼかし」などの水彩技法がとてもやりやすそうな印象でした。
ということで、次は実際に水彩技法をいくつか試してみましょう！
水彩紙のスケッチブックで気になるのが、重ね塗りやぼかしなどがやりやすいのか、きれいに塗れるのか、 といったポイントではないでしょうか。そこで、ここからは中間の 紙肌となる「細目」の紙を使って、いくつかの水彩技法を試していきたいと思います！
まず試してみたのが「ウェット・イン・ウェット（たらし込み）」。まずは薄く色を広く塗ります。
次の色を用意している間もしっかり絵具が表面に留まっていて、濃くつくった同じ色をたらすと、じんわり広がりきれいなにじみができました。比較的濡れた状態が維持されるため、こういった技法を実践するにあたって慌てず取り組めるのはうれしいポイントです。また、 発色もきれいに感じますね！
続いて、同様に水を多く使う「ぼかし」も実践してみます。最初に塗った色が乾く前にいそいそと水をたっぷり含ませた筆を用意。境界をぼかしていきグラデーションを表現してみました。かなり水で濡らしているのに、紙は波打つことなく安定しています。
色を重ねることで色がにごってしまう懸念もある「ウェット・イン・ドライ」だと、どうなるでしょうか。
乾燥した下の色に重ね塗りしていくと……。
下の色や描線がほとんど溶け出さずにしっかり残っています！ もちろん水の量や塗る回数などによって結果は変わるかもしれませんが、ヘリテージはこういった重ね塗りにも便利な紙なんですね。
塗った色をティッシュで軽く押さえたり、水を含んだ筆でなぞったりして色を薄くする技法ですが、水彩紙によってはリフトアウトが上手くいかず、イメージ通りに色が薄くならない（白くならない）ことがあります。さらに、紙表面がボロボロになってしまう ことも……。
ここでは筆でゴシゴシとなぞって、途中ティッシュで押さえてみます。
いかがでしょうか？ ちなみに空に浮かぶ雲をイメージしてみました。
きれいに空の色が取り除けていますね。ここでは絵具が乾く前にリフトアウトを試みたのですが、実は乾いた状態でも水を含んだ筆でなぞることでしっかりリフトアウトができるのです！ それはつまり、修正がしやすいということでもあります。
また、紙がボロボロになっていないのはもちろんですが、筆でなぞったりティッシュで押さえたりしても毛羽立っている様子もほとんどありません。さすがの耐久性です！
最後に試したかったのが「マスキング」。テープでマスキングして白抜きをつくる技法ですが、テープを使うため、耐久性のある水彩紙でないと大きな傷ができないか心配になってしまいます。『キャンソン・ヘリテージ』だとどうなるのか……試してみましょう！
まずはテープを張って、上から筆で色を塗ってみます。そして乾燥するまで少し待ち、テープを剥がしてみると……。
きれいに白抜きできました。気になる紙表面を見ても、ほとんど毛羽立つこともなく、傷ができたりもしていない様子！ やはり耐久性の高さは大きな魅力です。
ちなみに今回使ったテープは粘着性が弱めのものです。水彩でマスキングをするときは粘着力に注意したほうがいいかもしれませんね。強力なものだと、さすがに紙を傷つけてしまいます。
しかしながら高い耐久性がある『キャンソン・ヘリテージ』なら、消しゴムや「スクラッチ」に対しての耐性も期待できますね！
水彩画を描いていると、いろんな技法を試してみたくなるもの。それに伴い、使う水彩紙にもこだわりたくなりますよね。
今回はレビュー企画の第2弾として『キャンソン・ヘリテージ』の特長や描き心地などご紹介してきましたが、実際に試してその感動を味わっていただくのが一番だと思います。
「いつも使っている水彩紙以外の紙を試してみたい」
「表現の幅を広げる意味でも、紙にこだわってみたい」
「自分が理想とする紙に出会いたい」
そんな方はぜひ一度、『キャンソン・ヘリテージ』を手に取ってみてください！
